「あん」アラカルト
健康食品である「あん」を食生活に上手に取り入れましょう。
桜餅、水ようかん、おはぎなど、四季を彩る和菓子に欠かせない存在として、またあんみつやお汁粉など、身近なくつろぎの味として、くらしのなかにしっかりと溶け込み、ホッと心和む時間を運んでくれる「あん」
ではこうした「あん」の食文化は、いつからおこったのでしょう。
「あん」が日本のお菓子の歴史に初めて登場するのは、紀元607年、推古天皇の時代。遣隋使などが送られたころに、中国のお菓子と一緒に伝わったとされています。遥か昔の人々の好奇心が「あん」を運んできたのです。
おなじみの「あん」は日本のオリジナル
けれども当時の「あん」は肉や野菜で作られた、中華の肉まんの中身のようなもの。豆からできる現在の形とはだいぶ様子が違います。
一説によると「あん」が肉類から豆類を使ったものに変わったのは、僧侶たちが、肉食を避けるために、小豆で代用したからだそう。室町時代に入ると、その小豆あんに砂糖が加えられ、善哉(ぜんざい)が生まれています。
善哉という呼び名、実はとんちで有名な一休和尚が名付け親だとか。
こうして幾つもの物語を織り交ぜながら変遷してきた「あん」が庶民の味になったのは、江戸時代。
お菓子屋さんの工夫で、大福餅やきんつば、おはぎなどのヒット商品が次々と生み出され、多彩な形で楽しめるようになりました。
小倉あん、こしあん、白あんといった一般的なものから、かぼちゃあんや、各種のフルーツあんなど、今ではその種類も多種多様。「あん」はまさに、日本の繊細な感性とアイデアによって育まれたオリジナルの嗜好食品なのです。
古くから、薬としても利用されてきた小豆
「あん」の原料といえば、代表格はやはり、小豆と白あんのもとになるインゲン豆。
小豆はすでに8世紀には国内で栽培されていたらしく「古事記」や「日本書紀」にも大宜津比売神(おおげつひめのかみ)の鼻から小豆が生えてきたという神話があるほど、古参の豆です。
また、その赤色が古来から邪気を払うと信じられ、赤飯や饅頭など、慶事の食卓と深く結びついてきました。この風習、一見、縁起担ぎのようにも見えますが、栄養学的に合理性のないことではありません。
昔の人は、産後の肥立ちの悪い女性に小豆を食べさせたといいますが、これは実際、小豆に含まれるサポニンにお産の時にできた血栓を溶かす作用があることが知られています。
また、脚気に効くといわれてきたのは、豊富なビタミンB1の働きですし、血液や心臓に良いとされてきたのは、鉄分をはじめとする各種ミネラルのおかげです。
今のように栄養学が発達しない時代でも、人々は、小豆の優れた栄養を感じ取っていたのでしょう。
小豆と「あん」の成分表 *財団法人 日本食品分析センターの分析結果による。
「あん」には、豆類の栄養バランスが生きています。
隠元和尚にその名を由来するインゲン豆も、小豆の負けず劣らぬヘルシー食品
あんの原料になる豆はどちらも、様々な栄養素がバランスよく含まれているのです。
先に挙げた以外にも血中コレステロールを下げてくれるといわれるリノール酸やリノレン酸。老化を防ぐといわれるビタミンE。体内の代謝を活発にするといわれるビタミンB2。欠乏すると皮膚炎や貧血の原因になるといわれるB6など、体に欠かせない栄養素がいっぱい。
他にもたんぱく質、カルシウム、脂肪など、豆類のヘルシーパワーにはもう脱帽です。
「あん」なら、こうした栄養素を食べたいときに、いつでも口にすることができますね。
美容を考えても、やっぱり「あん」です。
豆類の成分でも、もう一つ忘れてならないのが、食物繊維の存在。小豆とインゲン豆は、海藻類などと共に、食物繊維を多く含む代表的な食品に挙げられています。
食物繊維は、おなかの働きを助けて、便秘を防ぎ、ひいては大腸がんの予防や糖尿病の治療にも役立つといわれるなど、メリットいっぱいの食品成分。
小豆とインゲン豆の食物繊維は、茹でることでさらに量が増えるため、「あん」を食べることは優れた食物繊維のとりかたと言えるでしょう。
便秘はお肌の大敵でもあります。「あん」を食べて上手に便秘をやっつけましょう。
「食べるのはいいけど、カロリーが心配だわ・・」いえいえご安心ください。カロリーセーブを考える皆さんにもぜひお勧めしたいのが「あん」なのです。
「あん」を使ったお菓子は、クリームなどで甘みをとるお菓子より、全般的に低カロリー。
満足できる甘みを楽しみながら、カロリーコントロールが可能です。
栄養バランスが良くて、低カロリー。ヘルシー志向の皆さんにぴったりの嗜好食品として注目されている「あん」。今では昔のように手作りしなくても、生あんや、こしあん、粒あん、または砂糖を入れて炊き上げた濃し練りあん、粒練りあんなど、お店にいろいろ。
ご家庭でもお好みのデザートに応用できるようになっています。
魅力いっぱいの「あん」ともっと仲良くなって、食生活をヘルシーに演出してみませんか。